2006/12/07 クズの種




 夏の終わりに赤紫色のクズの花が並んでいた場所を、しばらくぶりに通りがかりました。
高さ5m位の崖を一面にクズが覆っていますが、それだけでなく崖の上のクヌギやコナラの梢にまで這い上がっていて、なかなか壮観です。
もう黄色く枯れはじめている葉やツルを眺めていると、まっすぐ突き出した軸にたくさんの実をつけているのが目に入りました。
サヤは褐色なので、枯葉にまぎれて目立ちませんが、注意して見るとそこかしこにあって、小さな鯉のぼりのようです。


 一本の軸についている実は10〜20房位。
もう、すっかり熟しているらしく、ちょっと触るとサヤごとポロリと落下しました。
サヤの中には、小さなタネが入っていますが、このタネがどういう風に繁殖にかかわっているのかは、まだ謎が多いそうです。

 毛だらけのサヤに入っているタネは、長径3mm位。
クズの繁殖には,タネの発芽による方法と,茎が切れて独立する方法がありますが、 何年かクズが育っているところでは、ほとんどタネの発芽はないそうです。
つまり、クズの群落は、まず最初にタネによって基礎がつくられ、 その後は昆虫、ネズミの食害で茎が切断されることで、逆にふえていくわけですね。
最初にクズのタネを運んで繁殖に力を貸すのはどんな鳥か?調べてみるのも面白いかな(^_^)

 クズのタネには、全く外見のちがった2種類のものがあります。
上左の写真は、表面の皮が茶色で、柔らかいタネ。
上右の写真は、まだら模様があって、堅いタネです。
両方がひとつのサヤの中に入っている場合も、どちらか一方しか入っていない場合もあります。
上のタネは、10個の実から出てきたもので、茶色6個、まだら模様が11個でした。

 数の上では、まだら模様のタネの方が沢山ありますが、発芽は、茶色のタネの方が水を吸収しやすく早いそうです。
と言っても、まだら模様のタネにもチャンと発芽の能力があるそうですから、それぞれが環境に応じて勢力をのばすのに役立っているのかな?
繁殖の達人クズには、奥の深い知恵がありそうですね。