ムラサキシジミ


 チラチラと目の前を飛び回っていた小さな蝶が、地上2mほどの木の葉にとまり、ゆっくりと羽を開きました。明るい陽射しを浴びて、とても鮮やかな群青色です。ホラ見つけたぞ、越冬中のムラサキシジミ! 急いでカメラを取り出して連写していると、通行の人も立ち止まって「キレイキレイ」と声をあげていきました。
さてお次は、この蝶の隠れ家を突きとめなければなりません。どこかこの近くに、南面・風弱・閑静と三拍子そろった越冬用物件が確保されている筈です。 もう正午近いので自分の昼飯も気になりますが、ここは粘りどころ…と帰る時間を先送りしました。
 ベンチに腰かけて蝶を見張ること1時間、あちこち移動しながら日光浴をしていた蝶が、フイに地上1mほどの常緑樹の葉裏に姿を消しました。 さては…と覗きこむと、イタイタ!クモの糸でつづられた枯葉の下にひっそりと止まっていました。 2本の触覚を葉にちかづけ、羽を閉じた姿は枯葉そっくりて、これなら腹をすかせた鳥の目もごまかせそうです。
 ムラサキシジミは成虫で冬を越す関東地方では数少ない蝶の一つ。もともとは暖地性の蝶ですが、比較的寒さに強いので。越冬中も暖かい時間帯には飛ぶ姿を見ることが出来ます。 越冬するのはほとんどが雌といわれ、隠れ家で無事に春を迎えた蝶は新芽が芽吹くころに産卵して世代をつないでいきます。